ふうん、そっか。

確かにそうだ。

本当はこどもだったら、

働くのって、だめだもんね。

女将も厳しいこと言うなあ。

ちいちゃんは背が小さくて、

ちっとも大人に見えないし。

一人でお手伝いするのは、

今日が初めてなんだもの。

まあでも、ばれてもだいじょぶか。

きっと優しいお兄さんなら、

『大人です』って、言い張られても、

『そうだよね』って、笑ってくれるよ。

舞台は伊豆、季節は春。

鳥の鳴き声、波の音。

小さな島に建てられた、ちっぽけな旅館、

駿河湾のさざなみが聞こえるお部屋で、

耳かきしてあげたいって、ちいちゃんが言ってます。

練習してきた、みたいだから、

腕前はおりがみつき。

そんな、無下に断らないで。

まあまあ、どうぞ、しばしの間、

癒やされてみて、くださいね。

ちいちゃんはおにいさんに、

言いたいことがあるみたい。

おふとん一緒にもぐりこんで、

なんの話を、するのかな?

…そうか、デートか。

それは、いいね。

島の周りを、お散歩したり、

伊豆をぐるりと、ドライブしたり。

ふうん。島には小さい、水族館も…。

あれ、ちいちゃん。

すやすや、すやすや…。

…ねむたくなった、みたいだね。

今日はいっぱいがんばったから、

きっと、疲れちゃったんだ。

おやすみ、ちいちゃん。

…またあした。

自分が子供だってこと、

まだおにいさんに伝えてないの?

ちいちゃんは真面目だから、

ひとりで、かかえこんじゃったんだ。

それだとお胸が、苦しいよね。

自分の気持ちに素直になって、

全部言ったらどうかなあ?

だって、ここは、夢だから。

ちいちゃんが素直になれば、



きっと、全部、



うまく、いくよ。



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本作品は制作資金をクラウドファンディングにて支援していただきました。

ご支援いただいた皆様に、この場を借りて御礼申し上げます。

なまましゅまろ